1 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:26:26.583 ID:qP4W4GDs0 [1/54]
昨日スレ立てした者です。
昨日はgdgdですいません。
やっぱり自宅のPCぶっ壊れてて投稿できませんでした。
今から書き溜め分投下していきます。

前回の記事:パチンカスになった俺がメンヘラ女を好きになった話を語っていく
元スレ:https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1557793586/

5 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:31:51.703 ID:qP4W4GDs0 [3/54]
追悼。
当然言葉の意味は知っている。
だからこそそれが上手く現実と符合しなかった。
最初に言っておくが、追悼といってもバンドの解散を指しての言葉ではない。間違いなく、故人を指したものだ。
俺はつま先から力が抜けていくのを感じながら検索画面をwebページに切り替えた。検索結果の一番上にHPが出てくる。白色の背景。グレイタイプのエイリアンの被り物をした人間がそれぞれ楽器を持っている。
最終更新は当時の年号よりも古い。
infoの欄をタップしてページを開く。
ライブの予定やTシャツの通販なんかの広告が初めに目につく。
そして予定表の日付の横に表示された「中止」の文字。白を基調にした背景なので赤色の文字は目立っていた。
さらに俺は検閲を続ける。
blogのページに進み、一番初め、事実を決定づける一文を発見した。
【謝罪】
この度、自分たちの都合でライブをキャンセルしてしまい申し訳ございません。
この記事をもって更新を最後にさせて頂きます。
バンドも解散します。
解散ライブに関してですが、行いません。
やはり一人でもメンバーが欠けてしまった以上、僕たちではないからです。
ここはうろ覚え・・・
本当はもう少し長い文章だったけど、なんか無機質な感情のない感じの通達って感じの記事だった。
更に記事の過去分をさかのぼる。
【謝罪】の前の記事は、数か月前に投稿されていた。
俺はとにかく記事を逆行し、彼らの事を調べた。
結果わかった事。
ミラーマインドのヴォーカルは数年前に死去していた。


6 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:31:51.873 ID:rNZ/48mS0 [1/5]
おう待ってたぞ


7 名前: [sage] 投稿日:2019/05/14(火) 09:41:03.903 ID:ZcdaP9ACd
まっとったで


13 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:44:39.437 ID:qP4W4GDs0 [9/54]
>> 6
>> 7
ありがとうございます。
初投稿でぐだぐたなってすいません。踏んでください。


8 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:42:42.282 ID:qP4W4GDs0 [4/54]
念のため初めに見つけた動画も再生したが、
どうやらアスカの部屋で聞いたCDの歌声と同一人物らしい。
らしい、と曖昧なのは事実が呑み込めないのと、物理的に、音源の差で正確に判断できなかったからだ。
ということは・・・どういうことか。
アスカが彼氏だと言った人物は既に故人で・・・ならアスカは俺に嘘をついたということだろうか?
俺は反射的にwebページを落とし、ラインのアプリを開いた。
アスカのトークルームを開き、そこで手が止まる。
この時は正真正銘、思考よりも先に行動していたので何故そんなことをしたのかわからない。手が止まったのは自分の言いたいことが文字にできなかったからだ。
『え、アスカさんの彼氏て亡くなってるんですか……?』
多分、聞きたかったのはそれだ。
けれど聞けるはずがない。俺はキモオタだが人の気持ちが解らない人間ではないのだ。それが相手を傷つける言葉かどうかの判断はできる。
理由はそれだけではない。
俺はアスカに拒絶されたのかもしれないという事実が怖かった。
そうだろ?
嘘だったら、そんなもん直ぐばれる。事実、俺は数分スマホを操作しただけで特殊な人脈もテクニックも使っていない。
わざわざばれる様な嘘を吐いたのは、ばれる前提で嘘を吐いた意図を察しろということではないか。
いや待てよ、と頭を掻き毟る。
それこそアスカのキャラじゃない。俺の好意を拒否するならはっきりそう言うだろう。アスカはそういう人物だ。


9 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:42:59.514 ID:qP4W4GDs0 [5/31]
わからない。わからない。わからないから誰かに相談したい。
そうはいっても宛てがない。アニさんは昨日の今日でどの面下げて、て感じだし。アスカのことは大学の友人連中には話していない。
気づけばさっき振り切ったつもりの相手のことばかり考えていた。
思いを断ち切ろうとして、自分は失恋したんだと受け入れようと思ったはずなのにだ。結局どうしようもないくらいに俺はアスカが好きだった。
自分の未練を落ち着いて受け止めつつも、理性は警鐘を鳴らしていた。ここから先へは踏み込んではいけない。俺程度で受け止められる話ではない。
普通なら、ここで引いておくべきだろう。
だというのに、悲しいことに俺はキモオタのくせに妙な行動力があった。
何ができるわけでもないくせに車に乗り込み、向かった先はアスカの自宅。
この時ほど運転中をもどかしく感じたことはない。
まどマギの初打ちの時とは比べ物にならないもどかしさだ。その時と違ったのは、目的地を急ぎながらも心のどこかでまだついて欲しくない、心の準備をする時間が欲しいと思っていたことだった。
実際、信号で停車する度でかい声で独り言を言って余裕がないことを誤魔化していた。
家まで行ってどうする?
何て声をかける?
突然電話して、今あなたの家の前にいます!とか言ったとしてそこからどうするんだ?
「あー、調べたんだー、きも」
こんな事を言われるならいい。
どっち道もう破綻した関係なのだからトドメを刺された方が清々する。
この変な胸騒ぎが治るならそれでよかった。


10 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:43:18.412 ID:qP4W4GDs0 [6/54]
アスカ宅に到着したが、どうやら不在のようだった。
前回のことで部屋の番号は覚えていたので、今回は本人を呼び出すのではなくインターホンを押した。
それも5分おきくらいに合計3回。居留守かも知れないが確かめようがない。
今日はバイトだったか、それとも……
俺にはアスカの行きそうな場所にもう一つだけ心当たりがあった。
行き先は決まっている。
いつもの過疎ホールだ。
アスカの家から店までは車で15分ほどで辿り着ける。
途中ついに堪え切れなくなった俺はラインで「今どこですか?」とメッセージを送ったが返事はなかった。
ホールに辿り着く。
色々あってしばらくパチンコ屋を離れていた俺は自動ドアが開くと同時に頭が痛くなるような騒音と煙草の匂いにたじろいだ。ディープなスロカスマドキチの俺も随分衰えたものだ。
一階のパチンココーナーをちらりとも見ず、エスカレーターを一段飛ばしで駆け上がる。店員の張り上げるみたいな挨拶にびびってホール内は走らなかったが、早歩きで目的地を目指した。
当然、番長コーナーである。
俺は記憶にある番長コーナーにまっすぐに向かい、アスカを発見した。

俺の知る番長コーナーは、エヴァンゲリオン決意の刻のコーナーに様変わりしていた。


14 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:45:07.651 ID:qP4W4GDs0 [10/54]
ギャグみたいだがこれは本当だ。
なんでやねん、みたいに一人でつっこんで移動した番長2を探す。
ホールの間取りは円形の空間に沿って台が配置されている感じだ。ぐるりと一周すれば目当ての台を見つけ出すことは難しくない。
そしてやうやく発見。
番長コーナーは、縮小されて4台ほどに台数を減らしていた。
過疎ホールのくせに4台とも稼働している。
その中にアスカはいなかった。
落胆してふらふらとホールを彷徨う。
アスカが他の台を打ってるところなんて見たことがないが、もしかしたら番長の空き待ちでどっかにいるかもしれない。念のため休憩所も確認する。いない。ホールの中のどこにもアスカはいなかった。
宛てのなくなった俺は崩れ落ちるようにして休憩所のリクライニングに体重を預けた。
ここにいないなら探しようがない。
いっそ家の前で待っていればその内会えるだろう。むしろそうするしかないんじゃないだろうか。
時刻は19時前。
外はもう暗い。
こんな日が落ちてから自宅に張り付いていれば最悪通報されてしまう。
もういいや、帰ろう。
失意に飲まれて俺は帰宅した。


15 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:45:34.730 ID:qP4W4GDs0 [11/54]
家に戻り、無気力なままベッドに身を投げ出そうとした瞬間だった。
先に放り投げたスマホが振動して液晶のハイライトが灯る。
『バイト終わった(・Д・)』
アスカからだった。
いつもと変わらない調子に安堵する。
俺は急いで返信した。
『お疲れ様です!
今電話いいですか?』
『ダメ。今バス。
ご飯まだ食べる』
二つ目の意味がわからない。
『だったら奢ります!
俺今日勝ったんで!d(^_^o)』
『いいよいいよ(((o(*゚▽゚*)o)))♡』←顔文字は忘れたけどこんな感じのにハートが付いてた。
断られてるのか喜ばれてるのかどっちだ?
『あ、じゃあ、家着いたら連絡下さい!』
なんとも攻めれず、草食系丸出しの俺。
滞りなかったアスカからの返事が止まった。
それから少しして再度端末がバイブレーション。
『帰宅ー!
今からお風呂』
この人は、余計な事を……!
……ふぅ。
今をもってしてもアスカの『お風呂』ということばの威力は俺にとって絶大だった。
落ち着け俺の分身、冷静になるんだビークール。
とはいっても直ぐに冷静になれるほど奴は単純ではない。ならばアスカの入浴中に情事を済ませてしまおう。
そう思ってwebのブラウザを開いた直後だった。
瞬間、液晶画面が制止する。
あらゆるページはタップを受け付けずにフリーズ。違和感に対して遅れてくる機体のバイブ。それに伴い暗転する液晶と追随するような重厚な低音が着信を知らせる。
呼び出し主を告げる文字が画面中央に表示されていた。
「着信……? ……アスカから?」


16 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:50:44.715 ID:qP4W4GDs0 [12/54]
戸惑う事20秒ほどだろうか。
ようやく事態を飲み込んだ俺は通話ボタンをタップした。
「もしもし……?」
『出るのが遅い! また風邪引いたらどうすんだ!』
紛れもなくアスカだった。
久し振りに聞くアスカの声はあの日以前と変わりない。
それよりもなんだ、今気になることを言ってなかったか?
『すいません、ちょっとスマホ放置してて』
返信しない女子か俺は。
『風呂じゃなかったんですか……?』
『ん。俺君電話するて言ってたの思い出して』
あー、なるほど。
『アスカさん』これは本当に言った。『今パンツ履いてますか?』
『はあ?』
うわぁ、やばいこの声ぞくぞくする。
「や、風邪とか言うから、もしかして上着とか着てないのかなて、ほら最近は夜だとまだ寒いしそれにふじこふじこ!」
やっぱりパンツは最後ですよね?
脱ぐならまず上からで、え、じゃあ今もしかして上は何も着てなかったりするんですか!?
当たり前だけどこれは言ってない。
『まだ履いてる』
答えてくれるんだ。
「ですよね、また風邪引いたら大変だし」
『誰のせいだと思ってんだ』
もー、と言った後にはぁ、とため息。
『どうしたの? 要件は?』
アスカはどことなくアニさんみたいな話し方になった。
「いや、えっと……」
肝心な時になにもでてこない。
沈黙が続いて切られることを恐れた俺は後先考えず、
「あの、バンド」
そのように発言していた。


17 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:51:03.312 ID:qP4W4GDs0 [13/54]
「アスカさん家で聴かせてもらったCDすごいよくて、他にも聴きたいなあー……と……」
『そうなんだ!』
アスカさんの声は明るい。
『んー、いいよ。どうしよっか? また家くる?』
それはなんと魅力的な提案なんでしょう。
なんなら今直ぐに馳せ参じますので、どうかそのままのお姿でお待ちいただけますか?
『そっか俺君も気に入ったんだミラーマインド』
「あー、はい……えっと」
『?』
俺の歯切れの悪さにアスカさんが「ん?」みたいな声になっていない音を立てた。
「付き合ってるんですよね……」
『そうだよ』
即答された。
「いや、その、ええと、」
俺もう焦りまくりで言葉が出てこない。
その人、俺の認識ではもういないんですけど?
だから付き合ってるじゃなくて付き合ってた、ですよね?
でもそんなことは言えずどうしても会話が迂回する。
「大丈夫ですか? そんな、家くるとか言っちゃって……? やっぱりほら、怒られたりするんじゃないですか?」
『あはは。なんだそれw』
『大丈夫だよ』
『いーくんはそういうの気にしないから』


18 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 09:51:20.004 ID:qP4W4GDs0 [14/54]
『遠距離長いからねー』
とか、そんな調子のことを色々言われた。
アスカさんが何か言うたびに胸が締め付けられた。
好きな人が恋人のことを嬉しそうに話してくるのが苦しいとか乙女チックな青春をしていたわけじゃない。だってその人個人ですよね。なんでそんな、今まさに幸せの絶頂みたいに話せるんですか?
『俺君さあ、よかったら今度ライブ行く?』
俺とは反対にどんどんテンションが上がっていくアスカさんが提案した。
「ライブて、なんの?」
『えwwwこの流れでわかんないの?w』
「……」
今度いつやるのかなー、確認してみるね!
そう言って自然と通話を切る流れになり、どうにか引き止めようとして俺は言った。
「アスカさん、あの……もう解散してますよね」
『    』
電話越しなのに空気が変わったのがはっきりわかった。
「いや、俺、自分でも調べてて、そしたらボーカルの人が、そのアレだって……」
『なんだよ』
感情のない機械でサンプリングしたみたいな声だった。
「ごめんなさい、俺、アホですよね? けどなんつうか、やっぱりはっきり言われた方が諦めつくし、あー、でも俺もちゃんと告白した訳じゃないし、そんで、あー、えっと」
正直あわあわしてたので何を口走ったか覚えていない。
まくし立てるみたいに話した。
なんとなくその先をアスカに言わせてはいけない気がしたからだ。
『わからない』
『俺君が何言ってるのか』
『なんで解散なの?』
『なんでそうなるの?』
『なんで?』
『なんで?』
『なんで?』
『もういいや、変なこと言うなら知らない』
『どう言うつもりか知らないけど、俺君そういうのよくないよ?』
『じゃあね』
空気が固体で視覚的に認識できるものだったなら、この時確かに俺の目の前は粉々に砕け散った。
アスカさんが言っている間、俺は制止の言葉を挟んだりなんか無闇に謝ったりしていたが、
そもそも彼女の言葉は俺に向けられていたのかさえ怪しく、二人で全く噛み合わない会話をしていた。
ぶつり、と通話が途切れる。


19 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 10:05:18.274 ID:qP4W4GDs0 [15/54]
スマホで書き溜めてたんで短いですが一旦終わりです。
昼間当たり会社抜けて満喫でも行ってきます。


24 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 10:49:13.918 ID:rNZ/48mS0 [2/5]
おもしろくなってきたね
でも変に脚色せず出来事を順番に正確に書いたほうがもっと良いと思う
小説なら好きに書けばいいけどこれはノンフィクションなんだろ?


25 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:07:22.960 ID:qP4W4GDs0 [18/54]
>> 24
会話の内容とかはどうしても覚えてない部分があるので脚色になってしまいます・・・
俺も内容くどいと思うんで描写もっと減らしますね。


26 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:37:27.187 ID:qP4W4GDs0 [19/54]
すぐに掛け直したが切断された。
もう一度掛け直すと今度は話中。
よせばいいのに、やばいと直感した俺は数分後には車上の人になっていた。
運転しながらも震える手で何度もアスカに発信する。
よせばいいのに。
自分でも訳が分からなくなりながら、アスカ宅へ急いだ。


27 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:38:51.204 ID:qP4W4GDs0 [20/54]
落ちそうなんでちょっと書いてたぶん貼ってきます。

車を飛ばして日中にも訪れたアスカ宅へ到着する。
インターホンを鳴らす。出ない。
電話もかけてみるが出ない。
無視されてるのだろうとも思ったが食い下がった。
それこそ通報されてもおかしくないくらいに何度も。
そんなことをしているとものすごい勢いで男がこっちに向かってきた。
ああ、ついに俺も前科持ちかあ、と思って観念したが男は俺のことなど無視。
あろうことかついさっきまで俺がそうしていたように、アスカの部屋を呼び出し始めた。


29 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:42:53.841 ID:qP4W4GDs0 [22/54]
「ちっ……!」
鬼気迫る感じで舌打ちする。
男の事は松田桃太に似ていたので松田とする。
松田はどこかに電話をかけながら(状況的にアスカに電話をしてたんだと思う)インターホンを鳴らしまくった。
「なあ、あんた」
松田の視線が俺に向く。
「ここの人か?」
「違います、けど」
「そうか」
松田はそれだけ聞いて自分の作業に戻った。
アスカの部屋を呼び出しても応答がないと悟ると、
今度は連番になる部屋番号を呼び出し始めた。


30 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:43:43.008 ID:qP4W4GDs0 [23/54]
「3××室に住んでるやつがやばいんだ! ロック解除してくれ!」
みたいなことを怒鳴ってる。
当然すんなり開けてくれる人などいない。
そんなことを数回繰り返していくうち、
ついにオートロックが解除された。
「ちょっと、すいません」
「あぁ?」
駆け込んでいこうとする松田を俺は呼び止めた。
「俺もついてっていいですか?」
「……?」
「その部屋の人、知り合いで、心配なんです」
松田は何も肯定も否定もしなかった。
一目散に駆け出していく背中を俺も追いかける。
「おい、アスカ! おい開けろ!!!」
部屋までたどり着くと松田はアスカの部屋の扉を殴りまくって叫んだ。


31 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:44:07.559 ID:qP4W4GDs0 [24/54]
「おい、おいって!! 返事しろ、大丈夫か!?」
そんなことを繰り返していたと思う。
鬼気迫る勢いで、逆に俺はさっきまでの熱が引いていく。
止めた方がいいと思ったところに、管理人?みたいな人が慌ててやってきた。
「すんません、この部屋開けてください! 中で知り合いがやばいかもしれないんです!」
松田は冗談に聞こえない口調でやってきた中年の男性につかみかかった。
でもねえ、とか、そういっても、とかそんなやりとりがあった気がする。
最終的に松田の勢いに負けて、中年はアスカの扉の施錠を解除した。
「アスカッ!!!」
松田が部屋に入る。
あんたは? みたいな顔で俺を見ている中年を差し置いて俺も松田に続いた。
絶句。
部屋の中に入るとキャミソールだけを身に着けたアスカが壁に凭れ掛かっていた。


32 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 11:45:10.734 ID:C5NRVnpxa [2/4]
oh…


33 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 12:07:47.412 ID:qP4W4GDs0 [25/54]
「アスカッ、おい! アスカ――ッ!」
アスカは、ぐったりしていたけれど目は空いていた。
胡乱な目つきで焦点が合っていない。どっか遠くを見ているみたいだった。
ここに至ってことの緊急性を察したのか中年が血相を変えて部屋を出ていく。
戻って救急か、警察でも呼ぶのだろうか?
「おい、おまえ。【俺君】か?」
「……え、はい」
なんで俺の名前を知ってるのかとか、一瞬気になったが考えるまでもなかった。
松田が舌打ちする。
「おまえもう帰れ」
「……」
帰れと言われて素直に帰れない。
こんな状況目の前にして立ち去れるならそもそもここまできていない。
「なんでこうなってるか、想像くらいできるだろ?」
「……なんとなくは」
「ちっ……。また連絡するから今は帰れ。おまえがいてもなんもできねーだろ」
「いや、俺は……」
そこで思いっきり殴られた。


34 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 12:08:07.215 ID:qP4W4GDs0 [26/31]
本気で人に殴られたのは初めてで、痛いとかよりも先に驚愕した。
こう、自分の体の制御が利かなくなって、上半身が背中から落ちていく感じ。
「……いーくん?」
ようやく思考が事態に追いついて、同時に頬、というか骨格?とにかく顔が痛くなる。
耳鳴りの中、アスカの消えそうな声が聞こえた。
「違う。俺だ。松田だ」
定まらない焦点をアスカと松田に向ける。
「よかったぁ……。電話してもでないから、心配したんだよ……?」
「はあ? ……おいしっかりしろ、アスカ」
「電話出てよ、いーくん。いーくん……。電話……出て?」


35 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 12:08:19.160 ID:qP4W4GDs0 [27/54]
うわ言みたいだった。
松田がアスカの手からスマホを取り上げる。
液晶が点きっぱなしの画面を松田が覗き込む。
「――ッ!!!!!!」
声にならない、息を喉の奥まで吸い込むみたいな音が松田から聞こえた。
「アスカさん……?」
痛む患部を抑えながら覚束ない足取りで俺もアスカに近づく。
松田に止められるかと思ったが、松田はスマホを凝視して動かない。
「いーくん……」
アスカの涙声が痛い。
「アスカさん、俺でも。……しっかりして下さい」
状況に置いて行かれそうになりながら、なんとかそんなことをいった。
何かしないといけないと思い自分の上着をアスカに被せる。
その後、いけないと思いながら松田の手の中の携帯を覗き込んだ。
多分、発信の履歴だと思う。
上から下まで、びっしりと全部、同じ名前が表示されていた。


36 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 12:18:46.511 ID:rNZ/48mS0 [3/5]
Nice boat.


37 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 12:42:26.126 ID:qP4W4GDs0 [28/54]
>> 36
やめろめろ


41 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 13:17:02.208 ID:GifR0Ayhd [1/2]
早く書いてよw


42 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 13:18:18.482 ID:qP4W4GDs0 [31/34]
>> 41
すいません、今やってる作業終わったら会社抜けだしますw


43 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 14:12:06.493 ID:CK7u4Hi00
早くしろ


47 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:36:46.621 ID:qP4W4GDs0
会社呼び戻されました。
ちょっと書いたんで載せときますね!
それから、住人か中年かが呼んだと思われる警察に聴取を受けた。
警察の感じだと痴情のもつれか何かだと思われているらしかった。
当人たちのことは事件性はないものとして深くつっこまれることはなかったが、
住居侵入?みたいなことをしてしまった件については厳重注意を受けた。
中年の希望としては今後立ち入って欲しくないとまで言われたらしい。
後で聞いたがアスカの携帯から両親へ電話もしたとのことだが結局繋がらなかったらしい。
警察から解放された後、ぐったりしたアスカは松田が連れて帰った。
別れ際、松田が俺に言った。
「大学生?」
「はい」
「明日の夜時間いい?」
「大丈夫です」
ちなみにバイトだったが腹が痛いとか言ってばっくれた。正直すまんかったと思う。
そして翌日。
見知らぬ番号から携帯に着信。
松田だった。


48 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:37:07.812 ID:qP4W4GDs0 [33/54]
『今どこ?』
「あ、自宅です」
『今から会える?』
「はい」
『じゃあ××のドトールわかる?』
「たぶん…大丈夫です」
『ならそこで。今から向かうから30分くらいでいけると思う。さきついたら店入ってて』
「わかりました」
手短いに済ませて待ち合わせ場所に向かう。
先に到着した俺は何故か店内に入らず店先で松田を待った。
遅れる事5分ほどで松田が現れる。
松田は仕事終わりからそのまま来たのかスーツ姿で、
顔がいいからやけに似合っていた。


49 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:38:19.043 ID:qP4W4GDs0 [34/37]
ちょっと待て、松田桃太てなんだ。
松田翔太です。


50 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:38:57.727 ID:qP4W4GDs0
「中入ってて、て言ったじゃんw」
「すいません」
「待たせて悪かったな。あ、まだ顔痛む?」
昨日のことを心配して松田が聞いてくる。
「はい」
「俺もいっぱいいっぱいだったから加減できなかった、すまんw」
すまんじゃねえよ。こっちはあわや昇天しかけたんだぞ。
「とりあえず中入ろうか」
促されるまま松田と店に入る。
隅っこの方に男二人で座り、松田がすぐに席を立った。
戻ってきた松田はトレーにコーヒーを二つ乗せていた。


51 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:39:22.135 ID:qP4W4GDs0
「おまたせ」
ナチュラルに奢られた。
正直かっこよかった。
同時に、昨日の事もあり引け目を感じる。
「えーと……」
委縮してしまって自分から話さない俺に、
松田は頬をぽりぽりやりながら話の切り口を探しているみたいだった。
身も蓋もない話題を2つ3つ消化してから、
「アスカからまあ……俺くんのこと聞いてる」
「そうですか」
ストーカーとか勘違いボーイとか言われてるんだろうか。
「いろいろ迷惑かけて悪かったな。そんで、単刀直入に言うわ」
「はい」
「アスカのこと好きなら、やめた方がいい」
それはいつかアニさんに言われたことだ。
今となってはその意味が全然違って聞こえるが。


52 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:39:56.251 ID:qP4W4GDs0 [37/54]
「もちろん一方的にもうあいつに近づくなとか、昨日の事は忘れろとかは言わない。殴っちまった手前、こっちの事情も簡単に話すつもりではいる」
「その……アスカと付き合ってるんですか……?」
言ってから自分の聞いていることがすごく幼稚だと思った。
松田は、いやいや、と手を振って否定した。
「それはないよ。あいつの男は俺らのリーダー」
「リーダー……?」
「そ。ミラーマインド」
すっ、と腑に落ちた。
その可能性はちょっと考えれば思い至っただろうのに、
松田の容姿が全然バンドマン然としていなかったので考えていなかった。
「あー……と。その、リーダーの人って」
「うん。死んだよ。3年前に」


53 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:41:39.102 ID:qP4W4GDs0
怒られるかな、と思ったけど松田は怒気のない声で言う。
「俺とあいつはガキの頃からの付き合いで……幼馴染ってやつ? 小学校から大学までいっしょだった。他のメンバーは年上だったんで、俺らが大学出るタイミングで上京して本気で音楽やろう、てことになったんだ」
で、いざ上京したら、
「あいつ、路上でさされて死んだ。アホなカップルの痴話喧嘩で、逆上した男に刺されたんだと。ドラマみたいで笑えるだろ?」
何が笑えるのだろう。無理して笑ってる松田に合わせて俺も笑うべきだったのかもしれないが、俺は全く笑えなかった。
「そんでさ、その頃はもうアスカとあいつは付き合ってたんだけど、アスカは葬式には来なかった。
当日に俺が家まで迎えに行ったけど、自分はあいつが返ってくるのを家で待ってるんだと。
そっからは時々アスカから俺に連絡がきたよ。
そっちではライブしてるのか、とか。GWやら盆やらは戻ってくるのか、とか。
だんだん頻度は減ってきたけど、昨日、久しぶりに電話きてさ。チケットくれだとさ。なんか俺くんといっしょに見に来るて言いだしたんだ」
昨日俺が掛け直した時、話し中だった相手は松田だった。


54 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:42:21.572 ID:qP4W4GDs0
「そんなこと今までなかったからちょっと焦ったよ。アスカのことは気にして会うこともあったけど、もう立ち直ったと思ってた。
意識してあいつの話題は出してなかったけど、全然そんなことなかったのな。あいつは結局、なんの現実も受け入れられてなくて、
今でも自分の恋人は元気にギター弾いて歌ってるんだと、思ってる」
昨日のことは気にすんな、と松田は付け加えた。
「アスカがああなったのは多分俺のせいだ。あいつの葬式の日みたいに、感情が死んじまったみたいなアスカの声なんて久しぶりに聞いたから、ちょっと、きつく言っちまった。死んだやつの事だろ、もう忘れろよ! ……てな」
俺の事を気遣ってくれてるのかもしれなかったが、どこか疎外感を感じて鬱になった。
「昨日は俺の家に泊めた」
まさか……へんなこと、にはなってませんよね?
「仕事行く前はまだ寝てたけど、嫁さんから目覚まして落ち着いてるて連絡来たから多分大丈夫だ」
「そっすか!」
「おお……急に元気だな」
松田が既婚者だと知って俺のテンションが2割増しになった。
それから色々と松田と話した。
死んだボーカルの人はどんな人だったのか、とか、今はどんな仕事してるのか、とか。ぶっちゃけ昨日のアスカの格好を見てどう思ったのか、とか。
俺はことがことだったので思い出しても全然興奮しないのが残念だったが、不謹慎な気がして言えなかった。
「ま、ああいう状況じゃなきゃ勃つわな」
「www」


55 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:42:43.093 ID:qP4W4GDs0 [40/42]
イケメンが言うと下種なのにかっこいいなー。
俺は不思議と松田と意気投合した。
それは俺たちが共にアスカを大切に思っていることが理由なのかもしれない。
松田はどうみても俺と違って本物のリア充でヤリチン野郎で既婚者だったが、アスカの存在が壁を取り払ってくれていたのだと思う。
言っても、俺のはガキの片思いで、松田のそれは親友の恋人を気にする大人な気持ちだったわけだが。
「そういえばさ」
話が盛り上がって、俺がコーヒーのお代わりを打診したのを断った後、松田が思い出し笑いする。
「おまえ、アスカと知り合ったのパチンコ屋なんだって?w」
「あー、はい」
「去年の年末くらいだろ?w」
「ちょwアスカに聞いたんですよね?w」
「まあな。なんか焼肉奢ってもらったとか、おまえのこと変なやつだって言ってたぜ?w」
まさかほとんど出会ったばっかりの頃に、アスカの口から俺の存在が第三者にリークされていたとは・・・。心底意外だった。


56 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:42:59.209 ID:qP4W4GDs0
「アスカ、あいつの影響でスロットやり始めたんだよ。俺もあいつに連れてかれたわw」
「あ、松田さんもスロやるんすか!? 今はまどマギが熱いすよね!」
「いや、もうやってないよ」
ほむぅ。
「まどマギは知ってるけど」
「マジすか!? 俺、世間ではネタにされてるけどさやかさん好きなんすよ! 5人の中で一番えろい体してると思いません!?」
「あ……うん。そうかもね」
松田はめちゃくちゃ引いてた。
「松田さんアニメとか見るんすか?」
キモオタは自分のフィールドだとノリノリだ。
「見るよ」
「!」
「ゴルゴとか」
「( ;∀;)」


57 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:43:28.812 ID:qP4W4GDs0 [42/54]
俺の暴走モードを遮って、
「俺くん、アスカのどこが好きなの?」
松田がガールズトークを持ち出してくる。
「どこって……」
「顔?」
「やー……」
かわいいと思うけど、外見に惚れたというのは薄っぺらい気がして濁す。
「あぁ、胸か」
「違いますよ!?」
いーっていーってみたいに茶化される。いやほんとに違うよ?
そこからからかわれながら俺は松田に心中を赤裸々に暴かれた。
誘導尋問を受けるみたいに、アスカのこういうところが好きだ、とか、ホールではしゃいでる姿が気になった、とか、ぼろ負けして死にそうになってるときに優しくしてもらった、とか。
言えば言うほど、俺は松田よりよっぽどアスカを知らない事を自覚させられて、だったらきっと、例の彼氏には足元にも及ばないことを思い知らされた。
そもそも男の影響でスロット始めたなら、俺が店で見てたアスカは本当のアスカじゃない気がして苦しくなった。


58 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:44:58.449 ID:qP4W4GDs0 [43/44]
アスカが番長ばかり打ってる理由も、松田が話してくれた。
「あいつがアスカに告ったのさ、大学の卒業式の日なんだわ。ぶっちゃけそれまでも付き合ってるみたいなもんだったんだけど。
……そうそう合宿ついてきたりとかw」
この辺聞くのが鬱すぎて聞き飛ばしてました。
話は告白に戻る。
「弱いくせにめっちゃ酔ってて、あいつ夜中にアスカのこと呼び出したんだ。で、どうしたと思う?」
「わかりません」
イケメンリア充のやることなど俺には想像もつかんし知りたくもない。
「近くの公園で弾き語りして告白。そんとき歌ったのがスロットの番長の曲」
こんな感じ、とメロディーを鼻歌で聞かされて、にわかな俺でもそれが【distance】だとわかった。アスカがしょっちゅう口ずさんでいたので気になって何度もネットで聴いた。


59 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 15:46:04.803 ID:qP4W4GDs0 [44/46]
すんません、いったんここまで!
なんか上司にすごい呼ばれてるんで終わったら続きかきます!
その間にdistance聴いておいて!!(ダイレクトマーケティング)


63 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:22:54.015 ID:qP4W4GDs0 [45/54]
先月の売り上げ水増ししたのがばれかけた。。。あぶねえ。
ようやく解放されたんで残ってる分上げます!


64 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:23:28.124 ID:qP4W4GDs0 [46/54]
なんで告白でディスタンスなのかと思ったけど、その時本人がはまっていたかららしい。
そこからは取り留めのない会話をして解散の流れになった。
店を出てから最後に、
「俺くんがどのくらいアスカのことを好きなのかはわからないけど。あいつがまだ吹っ切れていないてわかった以上、そっとしておいてやって欲しい」
そう言われた。
てっきり俺がアスカを変えてやる流れじゃないのか?と思い、そんな感じの冗談を言えるくらいには松田と仲良くなったつもりだが、あんまりにも真剣な顔で言われて俺は黙った。
「多分まだ時間がかかると思う。なんかの拍子に昨日みたいなことになるかもしれない。その時、万が一のことがあったら、俺や俺くんが必ず守ってやれる保障はないだろ?」
ガキの恋愛の尺度とはかけ離れた意見だと思った。
だから俺は「ご迷惑をかけてすいませんでした。アスカさんに謝っておいてください」とだけ言って、松田と別れた。


65 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:28:14.887 ID:qP4W4GDs0 [47/50]
それから一か月くらいは何もなかった。
ゼミの選択とか、定期考査とかに追われつつ、普通に大学に行ってバイトをしてとまともな生活を取り戻した。
もちろんスロットも打った。
番長は打たなかったが依然と同じまど豚に返り咲いた。
途中何故か輪廻のラグランジェに浮気もした。
ほむほむはいなかったけどまどかがいた。
ただアスカと出会った店にはいかなくなった。
もしかしたらまだアスカはあの店で番長を打っているのかもしれないが、顔を合わせるのが嫌で避けていた。
少しずつアスカのことを忘れ始めていた頃、
アスカから着信が来た。

66 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:31:24.266 ID:qP4W4GDs0
『もしもし俺くん?』
一度呼び出しが途切れるまで出る決断が出来ず、
直ぐに掛かってきた二度目の着信に応答する。
不安そうなアスカの声が呼び掛けてきた。
「はい……アスカさん、ですよね?」
携帯同士のやり取りでなんか変だなと思った。
アスカは、なんていうかしおらしい感じの、しゅんとした雰囲気だった。
『うん。久しぶりだね』
「はい。……なんていうか、その、元気でしたか?」
最後に見たアスカのぐったりした姿を思い出す。
『もう大丈夫。……だと思う。その節はご迷惑をおかけしました』
「話、聞きました」
『そっか。……あはは、なんか恥ずかしいね』
その話題に触れればまた松田さんに迷惑をかけると思ったが、
気づいたらそんな言葉を返していた。
大急ぎで会話を路線変更する。
「どうしたんですか? あっ、アスカさんから電話してくれたの初めてですよね!?」
『うん。迷惑かけちゃったから……ちゃんと謝らないといけないと思って。俺くんも、翔ちゃんに殴られたみたいだし』
それ、男として恥ずかしいので触れないでもらえます?
『わたし、こんど引っ越すことにしたんだー。いろんな人に迷惑かけちゃったし、なんか、いずらいし。実家戻ろうかなー』
とつとつとアスカは様々な話をした。
実家がやたらと厳しいこと。
通っていた大学も、自然といかなくなってやめたこと。
例のボーカルとの馴れ初めなんかも聞いた。


67 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:31:41.527 ID:qP4W4GDs0
『大学は、親に指定されてた。ものすごく頭のいい大学ってわけじゃなかったけど、お父さんとお母さんが卒業した大学だから、て。
だから頑張って頑張って……。勉強は苦手じゃなかったけどしんどかった。模試の結果がA判定じゃなきゃその度に吐いたりした。
友達とも遊ばなくなって、ずっと勉強ばっかりしてた。
そしたら仲が良かった子が、自分のお兄さんのバンドのライブに誘ってくれたんだ。
ライブハウスなんて行ったことなかったし、バンドとかも全然詳しくなかったし、なによりきっと怒られるから断ろうと思った。
でもわたしのこと心配して言ってくれてるんだ、て思ったらなんだか断れなくて。当日、わたしは親に嘘ついてライブを見に行った。
びっくりしたなあ……。こんな世界があるんだって。
色んなバンドの人たちが好き勝手歌って演奏して、すごくうるさくて耳が痛くなって、揉みくちゃになって足を踏まれたりしたけど、すごく楽しかった。
演奏が終わったら帰ろうと思ったけど、友達がお兄さんに捕まって、一人じゃ帰れないから隅っこで座ってた。
そしたらいーくんが声をかけてくれた。
たぶん、ナンパ……だったと思う。お酒も飲んでたみたいだし。いーくんお酒弱いのにすぐ飲みたがるんだw
どーして来たの?とか、誰かのファン?とか。
ちょっと怖かったから愛想笑いしてたら友達がお兄ちゃんと一緒に助けに来てくれた。
この子こーいうところ慣れてないんですよー、みたいに言って、
今日は勉強の息抜きて説明してた。
そしたらいーくんはわたしに、
「なあ、今日楽しかった?」て聞いてきて、その質問だけはわたし本音で答えられたんだ。
そしたら「また来いよ」て。お酒で顔真っ赤にしながら笑って言われた。
たぶん、そのときわたしはいーくんのこと好きになったんだと思う』
聞き上手な男がかっこいいと思っていた俺は、アスカの話を最後まで黙って聞いた。相槌も打たなかったと思う。

68 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:32:02.081 ID:qP4W4GDs0 [50/54]
『友達にお願いしてもう一度だけライブハウスに連れて行ってもらったんだけど、その日は参加してなくて。
落ち込んだけど、その後いーくんからメールがきてびっくりした。
友達のお兄ちゃんが取り次いでくれたんだって。
それから家のこととか、勉強のこととか相談に乗ってくれて、
「で、おまえはどうしたいの?」て言われた時、
「いーくんの彼女になりたい」て言ったら、
「なんだそれw」て笑われた。
本気だったからすっごく悲しかった。
それで初めて親に反抗した。
もっと勉強頑張って、いい大学に行くから下宿させてくれて。
納得してくれなかったから勝手に学校で進路志望提出して、
模試の判定見せたら「勝手にしろ」だって。
わたし、いーくんのおかげで変われたんだ。
受験までわたしが全然ライブに行かなかったから、
どーしたんだって、いーくんに聞かれて。
受験勉強だからいけないって言ったことがあるんだけど、
また根詰めすぎてるんじゃないかって心配されて、それで、それで、今、楽しいから大丈夫って答えたら、
「バカだなあ」だって。
それで、それでね……それ、で…………』
ぼろぼろになりながら、アスカが最後に言った。
『……俺くんに会いたいなあ』

69 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:33:15.361 ID:qP4W4GDs0 [51/51]
会話書き殴りですいません、今日で最後まで書くつもりなんで仕事終わったら満喫行きます!
こないだ満喫だと連投規制でスレ立てできなかったんで、見てくれてる人いたら申し訳ないですけど保守お願いします!


70 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:34:16.082 ID:CK7u4Hi00 [2/2]
おい今見てるから早くしろ


71 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 17:37:56.829 ID:rNZ/48mS0 [5/5]
泣いた


75 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 18:25:07.206 ID:qP4W4GDs0
会社出る前にちょっと書きました!
今度こそしばらく落ちるんでみなさんよろしくです!


76 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 18:25:24.479 ID:qP4W4GDs0
松田との約束を破るみたいで煮え切らなかったが、結局アスカとは会うことにした。
何かあったらきっといろんな人に迷惑をかけると思ったが、
電話越しに泣いているアスカを放っておけなかったし、
自分の気持ちだって全然吹っ切れていなかった。
居ても立ってもいられなくなって車に乗り込んですぐにアニさんに電話した。
「俺やっぱり好きです!!」
『あたしは年下お断り。ぱしりにならしてやるけど』
この人いつの時代のヤンキーなの?
「あんたじゃねえよ!」
『あっそ。で、なに? また女々しい相談?』
「だから好きだって!」
『ありがとう』
「違う!」
たぶんこんなやりとりをした。
テンション上げすぎてて空回りしたんだ。
『例の女ならやめろって言っただろ。チ〇コの毛までむしり取られるぞ』
それは是非に。ではなく。
「計算高いアホ説やめてください! それ間違いでしたから!」
かくかくしかじか。
なるべくプライバシーに触れないように配慮してことの経緯を説明する。
アニさんは、
『うげえ……』
本心から引いてるみたいだった。
『痛てぇ……おまえそれアニメ見すぎ。童貞の妄想激しすぎるわ病院行け』
「これマジなんすけど」
もう俺が童貞なのか素人童貞(アニさん+1名)なのかはどうでもいい。
『やめとけって』
口調が変わった。
『それがマジだとして、おまえに何が出来んの?
その女に昔の男忘れさせられるほどの甲斐性なんてないだろ?』
「そりゃあ……けど俺は……」
『俺は?』
「アスカが好きだ」
アニさんは、きっも、と言っていた。
『あー、じゃあもうそれでいいんじゃねーの?』
「はい?」
『なんもできないより、好きでいられるだけましだろ。もういいか? どうせあたしが何言っても聞かんだろ、おまえ』
「はい!」
達者でな、とアニさんは電話を切った。
俺は何故だか凄まじい死亡フラグを立ててしまった気がしたが、
構わず信号と制限速度を無視して車を走らせた。


77 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 18:26:02.971 ID:qP4W4GDs0 [54/54]
細い坂道を登り切ると、小さな神社がある。
その麓?車が走れる幅の道の果てにアスカの家はあった。
道幅のせいで徐行を強いられるのがもどかしかった。
到着してアスカを呼び出す。
待っている間にすれ違った住民に熱い視線を送られたのが怖かった。
「……おまたせ」
懐かしい、初めて会った時のショートパンツにパーカー姿のアスカ。
ずっと家にいたのか髪はぼさぼさで、タイツは履いていなかった。
アスカはひらひら手を振って近づいてきた。
「アスカさん、俺、言いたいことがあるんです。話したい事、聞いてほしい事、うまく言えるかわかんないですけど、伝えたいことがあります」
アスカに駆け寄って肩を掴むと、自然とそんな風に口走っていた。
「ダメ」
短い拒否の言葉。
「わたしは俺くんの気持ちに応えられないよ? だから言わないで」
この時初めて。
俺はアスカに振られた。


79 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 19:42:52.712 ID:C5NRVnpxa [4/4]
wktk

80 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 19:46:10.206 ID:QpGUt7vXH [1/5]
これまだ残ってるてことでいいですか?
残ってたら続き書きます

81 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 19:47:06.977 ID:6zyZcooe0 [2/3]
たのまあ

82 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 19:48:07.092 ID:QpGUt7vXH [2/5]
>> 81
おk
とりあえずMAJOR10巻まで読んだら始めます!

83 名前: [sage] 投稿日:2019/05/14(火) 19:50:46.965 ID:1/YBDgcj0 [2/2]
>> 82
なによんどるんじゃぼけ

84 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 19:52:46.018 ID:6zyZcooe0 [3/3]
>> 82
は?

85 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 20:04:24.773 ID:QpGUt7vXH [3/5]
ちょっと待って、今おとさんイイトコロ・・・
なんか投下できてない分残ってたんで先貼ります。

「俺、は」
喉元を握られてるような気分だった。うまく言えないけど発声できない状態。
アスカは、
「ごめんね」
街灯の光が頬に当たっていて、それを避けるみたいに首を傾けてほほ笑んだ。
「わがまま言ってごめん。会いたいって言ったのは、そういうことじゃないんだ」
「だったら……っ」
だったらなんなんですか、という前にアスカが俺にスマホを突き出す。
「今はまだ俺くんの気持ちに応えられない。
わたしは、いーくんがいなくなった日から立ち止まっちゃったから。
俺くんのいる場所にわたしはいない。だから進まなきゃいけないの。だからお願い。俺くん」

棒立ちする俺の手に突き付けられたスマホが乗せられる。

86 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 20:05:38.779 ID:QpGUt7vXH [4/23]
「自分じゃできないから、全部消して」
なにをすればいいのか流れでわかった。
スマホのロックは解除されている。
ホーム画面から記憶に新しい通話履歴を呼び出す。
発信の一番上に、俺の名前、その下はあの日見たものと変わりなかった。
「俺くん……?」
俺は。
俺は、預けられたスマホを突き返した。
「ごめん、なさい。できません」
履歴を消すだけじゃない。アスカはデータ全部を消してくれと言っているんだ。
だけど俺にはそれができない。


87 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 20:06:36.264 ID:QpGUt7vXH [5/6]
「俺が、俺が好きになったアスカさんは……今までも全部含めたアスカさんだから」
全身ががくがく震えてしゃくり上げるみたいにしか話せなない。
「あの日俺が出会ったアスカさんは、それをしてしまったらいなくなるから……っ」
アスカは一人で感極まる俺を黙って見てた。
「消しちゃダメなんですよ。そんなことしたら、きっと、壊れる」
「どうして……?」
「わっかんねえよッ!」
女々しいけれど、昔の男の思い出なんて消してしまいたい。
アスカの中にいる『いーくん』を一遍も残さず消し去りたい。
それで、まっさらになった彼女と恋が出来ればどれだけいいだろう。
一方的な気持ちかもしれないし、アスカの中に彼がいる限りきっと俺なんかじゃ敵わない。
アスカが思い出して辛くなる思い出も、
苦しい時に支えにする幸せも、そのどこにも俺はいない。
それでもダメなんだ。理屈じゃなくそう思った。
88 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 20:07:12.115 ID:QpGUt7vXH [6/6]
「頭大丈夫か、あんた?
俺があんたのこと好きだって気づいてたんだろ?
その癖のろけ話なんて泣きながら聞かされて、
急に呼び出されたと思ったら振られたんだぞ?
忘れたいからデータ消してくれとか、そんなこと俺に頼むなよッ!
自分勝手なんだよアスカは!!
未練断ち切れてないくせに、頭おかしくなるほど好きな男がいるくせに、
できもしねえのに忘れるなんて言うなよ!」
「……だったらどうすればいいの?
みんながいーくんはもういないって、
翔ちゃんは優しいからゆっくりでいいて言うけど、
俺くんにも迷惑かけて、それで、どうして」
「3か月!」
「なに?」
「3か月待って」
「……はあ?」
「俺に……時間をください。お願いします」


89 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 20:33:07.918 ID:CK7u4Hi00 [3/4]
MAJOR読んでんじゃねーよ
ジャイロボールぶつけんぞ


92 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:39:43.372 ID:QpGUt7vXH
「タケシ、サークル軽音だったよな?」
「あ? うん」
「もう辞めたよな。バンドやってもモテなかったから」
「やかましいwなんだよ?」
「ギター貸してくれ」
「はあ……。いいけど、こんな時期にサークル入んの?」
「まあ、そんな感じだ」
「いいよ。じゃあやるよ、俺のギター」
「まじで?」
「中古だから6万な」
俺はタケシの脛に黄金の右を食らわせた。
次にやったのは大学のPCで適当なフリーソフトをダウンロードし、動画サイトにアップされている動画の音声を抜き取った。
卒論用に新調したUSBに保存したそれを講義が終わってからアニさんのところへ持っていく。
アポなしで押し掛けたため不在だった。
電話をしてもなかなか出ない。
とりあえずラインを送って帰りを待った。
『はよ帰ってこい。どこで遊び回ってんだこのビッチ』
『童貞腐らせながら一生待ってろ』
あまりにも帰りが遅いので挑発するとそんな罵倒が返ってきた。
ふむ。
やはりアニさんの言葉責めでは俺は上がらない。

93 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:41:16.682 ID:QpGUt7vXH [8/23]
仕方なく近くのパチンコ屋で時間を潰して、やっとアニさんとご対面。
「アニさんのせいで2万負けました」
「知らんがな。で、なんだ?」
「これ」USBを差し出す。「中に音声入ってるんでギターの譜面にしてください」
「はあ? 悪いけどあたしは見かけによらず芸術方面はダメだぞ」
「期待してませんよ、アニさんには」
アニさんの無言の肩パン。
しかし俺は動じないし感じない。
「アニさんならそういう知り合いくらいいるでしょ、無駄にケツの穴が広いんですから」
「顔だろ。それならおまえ一人沈めても揉み消せる程度には広いな」
土下座。
「すんません、アニさん、お願いします! 今はないですけど金なら払います!」
「なんだよおまえ。必至だな。まあいいよ。そういう知り合いに頼んでやる」
「!」
「とりあえず今から飲み行くから奢れ。それで勘弁してやるよ」
「りょうかいです!」
「金あんじゃん」
「……」

94 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:42:12.890 ID:QpGUt7vXH
この人本格的にただのチンピラだったわ。
その後は近くの居酒屋ステージで奢らされ、
酒気帯びになるので俺は今回もアニさんの家に泊まった。
アニさんはアスカとのことは聞いてこなかった。
だから俺も何も言わなかったが、
なんとなくこの人は察してくれたのか、家に戻って電気を消してから、
「知らん間にいい男になったな」
とか言われた。
口説かれてる?
そこもっとタルホさんみたいに言って?
軽口交じりに「アニさんには及びません」と言ってから、
「でも、やんないんですよね?」
念のため確認した。
アニさんは答えないで、代わりに寝息を立てていた。
俺は、薄着で寝るアニさんのパンツで抜いてから就寝した。
確かに俺は変わった。

95 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:42:28.486 ID:QpGUt7vXH
後日談。
松田に電話した。
「松田さん、ギター教えてください!」
「あ? 俺ドラマーだし」
「(*´Д`)~~」

96 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:43:37.286 ID:QpGUt7vXH
ここまで来ればさすがに俺のやろうとしてることは言うまでもないと思う。
俺は先人にあやかって、弾き語りでアスカに告白することを決めた。
賛否両論あると思うが、あの時の俺にはそれが一番だと思えたからだ。
例の一件から3日と経たず、首尾よくギターは入手した。
6万はツケにした。
アニさんに頼んだ譜面は1週間ほどで出来上がったらしい。
ギターを手に入れてから10日ほど経って俺の元にやってくる。
その間に、俺は卒論の研究が忙しいとぼやくセイヤに手ほどきを受け、ギターの基礎を学んだ。
これで譜面が手に入れば余裕だと思っていたが、
理屈で音の出し方をわかってるのと、
譜面をさらえるのとはまた別で、
実際、譜面を見ながら思い通りの演奏をするというのはなかなか上手くいかなかった。
しかも歌まで歌わないといけないから骨が折れる。
独力の限界を感じ、俺はドラえもんに依頼した。
『どら焼きやるからギター教えろください』
『レクイエムでいいか?』

97 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:44:04.890 ID:QpGUt7vXH [12/23]
アニさんの無駄に広い人脈をいかし、無事コーチをゲット。
ある程度弾けるようにはなったが、コーチ曰く、
「俺に教えられるのは技術まで。生まれ持った才能には手の付けようがない」
その意味を俺は未だに理解したくない。
中学の頃の音楽の成績は常に2だった。

98 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:44:46.862 ID:QpGUt7vXH
約束の3か月が経つ前に俺はアスカに連絡を入れた。
白状すると心が折れた。
一月半ほど練習して、最初のほうはできるようになったのでそれで妥協。
『今週、会えますか?』
『ちょっと厳しい』
『……そこを何とか』
『手帳見る』
マジで見て。
『〇曜の夜なら、いいよ('ω')ノ』
『ありがとうございます!!』
『また連絡します!』
『り。待ってるね』
こんなやり取りをした。
当日俺はアスカを迎えに行くために約束の時刻の1時間ほど前にメッセージを飛ばした。
きっちりと1時間後に返事が来た。

99 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:45:31.676 ID:QpGUt7vXH
『今終わったー』
なにがだろう。
『俺くん家ー?(*´з`)』
なんだその顔文字。
『アスカさんの家まで来てますよ。ここで待つの通報されそうなんで早く戻ってきてくださいw』
『あー。わたしもう引っ越したよ』
『ちょw言ってくださいよw』
『ごめんw迎えに来てくれる?w』
『もちろん!www』
で、二駅くらい隣の駅で待ち合わせ。
時間も遅いので明るいところで待っててくれるのは安心した。
駅のロータリーに止めると近くの本屋からアスカが出てきた。
スタバとかあるんだからその辺で待ってればよかったのに。

100 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:45:36.600 ID:sgIFHBKJ0
文字多いな

104 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:48:01.016 ID:QpGUt7vXH
>> 100
すんません、なんかいろいろ思い出して、書いてるとどうしても多くなります。


101 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:46:16.166 ID:sMhq2l5/0
今もまだアフィブログって人気あるの?儲かってる?

105 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:48:33.844 ID:QpGUt7vXH
>> 101
そんなもんで稼げるなら俺はとっくに仕事辞めてパチプロなってるw
102 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:46:27.657 ID:QpGUt7vXH
「お待たせ。ありがとー」
アスカが助手席に乗り込む。
「わ、なにこれ、ギターケース?」
「はい。アスカさん、どっか、人気のないところありますか??」
「え。きもい」
マジで言われたんだw
そしてやっぱりアスカの暴言は下半身に来る。アニさんとは大違いだ。
なんとなく雰囲気とかギターとかでアスカもこの後自分が何をされるのかを悟ったようで、
「あー……じゃあ、とりあえず××の方向かって」
とかナビをし始めた。
アスカの誘導に従って気づけばホテル街へ!とかならよかったのに、
たどり着いたのは廃れた公園だった。
砂場とウンテイと縄でつるされたタイヤみたいな遊具とジャングルジム。それと無駄に長いベンチが一つ。
公民館と総合センターの近くのそこは、確かに時間帯のせいか人気がなかった。
問題は交番が近くにあったことだけど。

103 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:47:12.973 ID:QpGUt7vXH [16/23]
駐車するところがなくて少し遠いがコンビニの駐車場を借りた。
で、ギターケースを担いでアスカと並んで歩く。
「大学に行くんだ」
「え? 誰が?」
「わたしだよw」
「そすかw……え?」
「途中で辞めちゃったからちゃんと卒業したいな、て」
「……」
「今はバイトして、お金貯めて、それで、勉強してる。もともと勉強は苦手じゃないし。さすがに公立とかは無理だろうけど。私立ならなんとか……貯金も、ないことはないし」
「それなら俺が手伝いますよ! アルティメットバトルぶち込んで稼いできます!」
「そんな生き方してると結婚できないよ?」
これには俺のアイアンハートもぼこぼこになった。


106 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:49:15.141 ID:QpGUt7vXH [19/22]
「いいの。自分で始めないと意味ないから。
ちゃんと大学に行って、ちゃんと前を向いて、ちゃんと、自分の力で生きていかなきゃ。
わたして、ちょっと他人に依存するところあるからさー」
その依存先に俺は成りたいんだよ。
アスカに頼られたくて、頼ってもらえるような人間に見られたくて。
だから俺は歌うって決めたんだ。

107 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:50:20.988 ID:QpGUt7vXH [20/22]
とりあえず次で終わると思う。
ただちょっと空腹が限界なので少し休憩ください。
見てくれてる人ごめんなさい!もう少しだけ俺の所信表明にお付き合いください!!

108 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 21:55:33.254 ID:CK7u4Hi00 [4/4]
今見てるんだから早くしろ

109 名前: [sage] 投稿日:2019/05/14(火) 22:09:28.948 ID:HsrYs0k80 [2/2]
見てるぞー

110 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 22:49:45.529 ID:QpGUt7vXH
ギター「ディィィン」
最初からおもっきりミスった。
「あ、今のなし! やり直すんで待ってください!」
「……」
「すぅー、はぁー……」

♪もう↗ふーりー↘むぅかじゅ……

緊張しておもっきりかんだし音外した。

「もう一回。……もう一回、やっぱ外だと緊張して…」
「あはは」
面接官みたいな無表情で見ていたアスカが初めて笑った。
それから何度も何度も途中でやり直して、
アスカに笑いながら茶化された。
ガンバレー、と言われるたびに情けなくなった。
途中からギターなんて弾いてるのか適当に音を出してるだけなのかわからなくなって、
歌だって散々。
だけどアスカは最後まで聞いてくれた。
だから俺も最後まで歌った。

きっと『いーくん』の告白はこんなぐだぐだしたものじゃなかったんだろうな。
アスカの家で聞いてから、今日これを書いてる今まで何回も『いーくん』の歌は聴いた。
その度に自分と比べて悲しくなった。

111 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 22:50:07.843 ID:QpGUt7vXH [22/23]
俺は『いーくん』に会ったことはないけど、
絶対に俺は『いーくん』にはなれないのはわかる。
同じことをしようとしてもできない。
あの日の失敗があるからそう思うんじゃなくて、今現在もやっぱりそう思う。
だから忘れさせるんじゃなくて、成り代わるんじゃなくて、
俺は俺として、彼を忘れられないアスカを幸せにしたい。
アスカの中のあの人もひっくるめて好きで居続けたい。
それができるのは俺だけだなんて傲慢だけど、
きっと俺以上にそう強く思える男はいない。
必死にギターを弾きながら、歌いながら、
そんなことを考える余裕はなかったけど、
たぶん、余裕があったらそう思ってたんだろうな。

それで、届け、届って、気持ちを歌に乗せるってこういうことなんだな、て思いながら、
人生で一番好きになった人に歌いかけるんだ。
何度も言うけどそんな器用なこと俺にはできないから、

「アスカさんが好きです。俺と付き合ってください」

全部吐き出すみたいに歌い切ってから、もう何の捻りもなく告白した。
アスカさんは笑い疲れたみたいな表情で、目の端に涙を溜めて言った。

「……バカだなあ。俺くん……バカだなあ」

112 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 22:53:43.481 ID:QpGUt7vXH [23/23]
ごめん、ほんとにほんとに最後にこれだけ付け足す。
オチとかないし、ハッピーエンドじゃないし、
釣り宣言とかでもないけど、これを言わないとスレ立てた意味がない。
それから今日に至るまでの俺とアスカの関係は「恋人」ではないと思う…。
残念ながら。
けどそれらしい関係だということは多分俺の思い込みじゃない。
公園で告白して、なんかよくわからん反応をされて(『いーくん』の引用だと俺は勝手に思ってる)なんか気持ちを確かめられないでいた。
けど少なくとも今日に至るまでアスカに彼氏はできていないし、
少なくとも俺以上に個人的にあってる男はいないと思う。
一応ここにかけそうなエピソードがもう一個だけあるから書かせてほしい。


114 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 23:14:41.450 ID:QpGUt7vXH [24/27]
公園での一件から少しして俺とアスカは『いーくん』の墓参りに行った。
盆とかお彼岸とか命日とか全く関係ない日だった。
二人して墓の名前で手を合わせて線香を上げた。
アスカがちょっとどっか行ってて、て言うからあー、泣くんだろうな、と思って、離れるべきか残るべきか迷った。
残ったよ?
だって嫌じゃん、自分のいないところで好きな人が知らん男に泣かされるの。
アスカはやっぱり泣きじゃくって、もう何言ってるかわからなかった。
平日だったからそんなに人はいなかったけど、
それでもちらほらやっくる人にはめっちゃ見られた。
ひとしきり泣いた後、
「ちゃんとわかったよ。今までごめんね、いーくん。
わたしちゃんとするから。いーくんにばっかり頼ってごめんね。
大学の相談乗ってくれてすごい嬉しかった。
もう頭の中めちゃくちゃで、ただただ親に言われて勉強だけしてたけど、いーくんと出会ってからはちゃんと自分の人生を楽しめたよ。
それで、わたしのこと、好きって言ってくれる人ができました」

115 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 23:16:06.447 ID:QpGUt7vXH [25/27]
それを聞いて俺もなんか泣けてきて、
墓の前でしゃがみこんでるアスカを後ろから抱きしめた。
こう、めぞん一刻みたいなこと言っていい感じにしたかったけど、
現実はそんな甘くなくてなんもいい言葉出てこない。
うぇうぇ言いながらまだなんかアスカが話してたけど忘れたw
「アスカさん。……俺、年下で、経験少ないですけど、一生大切にします。絶対、アスカさんの一番になってみせます。本当に好きです」
「うん。……うん。そっか」
「はい」
「……じゃあね、俺くん」
「はい」
「スロット辞めて……?」
これな。
人がプロポーズかってくらい頭ひねって何とか捻りだした言葉にこんなこと言うんですよ。
涙流しながら鼻赤くして、呆れ笑いして目の端の涙を指で払ってた。
ギャルゲーとかだと絶対一枚絵になってたと思う。

116 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 23:17:01.010 ID:QpGUt7vXH [26/27]
それで、ちゃんと諸々も清算して、アスカは宣言通り大学に入学。
俺のスロライフはアスカの大学卒業と同時に卒業する約束をした。
そんで。
今年の三月で無事にアスカは卒業しました。
付き合ってるのかも謎な関係ですが、もう一回ちゃんと告白するつもりです。
スレ立てたのは、GWにまどマギ追悼会(9月で完全撤去される)をやって7万負けたのと、卒業してすぐ告白するつもりが今日までうだうだしてしまった自分にけじめをつけるため。
あと途中でいわれてたけどVIPでこういうの書くのが夢だったw
読んでくれてる人そんなに多くないと思うけど、
勝手にこれ読んでくれた人が応援してくれてると思って頑張る。
これで俺の話は終わりです。
駄文、クソスレすいません。
読んでくれた人、コメントしてくれた人、保守してくれた人、
みなさん本当にありがとうございました!!!!!

117 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 23:21:40.626 ID:slhA/QTx0 [2/3]
おつかれさま
告白はいつするんだ?
また結果をスレ立てしてくれ

118 名前: [] 投稿日:2019/05/14(火) 23:23:16.139 ID:QpGUt7vXH [27/27]
>> 117
俺のオナニーにお付き合いいただいてありがとうございます。
いつにしましょう…。
けっこうここで迷惑かけてると思うんでスレは立てないかとw
上手くいったら嬉しくて立てちゃうかもしれませんがw